外来生物法と野尻湖

編集部

 今年6月1日より、特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律「外来生物法」が施行された。

 同法は昨年6月2日に公布されたが、施行に向け、基本方針の作成、分類ごとに専門家会合を開き、特定外来生物の選定を行ってきた。この選定において最大の焦点となったのが、「オオクチバス」だ。学者や漁業関係者、自然保護団体などの指定賛成派と釣り業界関係者などの反対派の間で対立、環境省ではオオクチバスだけの小委員会を設置して検討を重ね、今回の施行の第1次リストに加わることが決まった。

 外来生物被害予防の三原則は「入れない・捨てない・拡げない」。ブラックバス問題は、同法の根幹とも言えるもので、一部の私欲による違法放流によって、またたく間に日本全国に拡がってしまったという経緯がある。釣り業界関係者など反対派からは、

・科学的データが十分でない
・一時的に爆発的に増加しても時間がたてば減少し、生態系と調和する
・在来種減少の主原因は環境悪化でありオオクチバスではない
・指定すると社会的
・経済的影響が大きいなど

の意見が寄せられたが、専門家会合では、検討過程でも提起された意見であり、これまで得られた知見の蓄積によってもオオクチバスは「生態系への被害を及ぼすものであることは否定できない」「釣りやキャッチアンドリリースを禁止するものではない」として、指定リストに入れる結論を出した。

 2003年4月22日、外来魚の規制等を検討していた長野県内水面漁場管理委員会では、ブラックバス、ブルーギルの再放流(リリース)を禁止することを決め、同年6月から施行することになっていた。しかし直前の5月26日、「県民の理解と協力を得るためにはもう少し時間が必要」だとして、委員会の指示を延期することになった。この決定前の23日に田中知事から信濃町町長に「地域の事情を考慮する必要があるので、6月1日にはリリース禁止を実施しない」との電話連絡が入ったという。町長は「猶予期間が欲しい」、野尻湖漁協は「同湖を対象から外すよう」要望を出していたということだ。

 委員会の決定から2年経った今でもこの件に関しては延期されたままだ。

 野尻湖でオオクチバスが最初に確認されたのは1983年ごろ。1991年にはコクチバスが、そして2001年にはブルーギルが確認されている。今回外来生物防止法の指定を受けた魚類のうち3種が野尻湖には定着しているわけだ。

 ブラックバスが増え始めた当初、野尻湖漁協では「わかさぎを食い荒らす害魚」として、駆除に躍起になっており、一時は買取も行っていた。しかし、駆除のための助成金も少なく、思うような効果も出なかったため、共存を余儀なくされたとして、1995年に駆除目的でルアー釣りを解禁するに至った、ということだ。しかし今では観光資源として重要なものになったとして、駆除対策は採られていない。今回の外来生物法に関しては、ブラックバスを指定魚にしないように関係省庁などに働きかけを行ったということだ。

 ルアー釣りを解禁した1995年には漁協に入る遊魚料が前年の3倍に跳ね上がった。湖畔の釣り舟業者たちがバス釣り用のボートをたくさん購入していた時期だ。だが、1998年をピークに減少傾向にあり、今では休日といえどもバス釣りボートの数はまばらになったように見える。経済的効果だけで言えば、居るのだから仕方がない、共存だ、という方針でいつまでもつだろうか。

 漁協が毎年多くの費用をかけて放流している認定魚種以外、昔から生息していた魚類の姿はほとんど見られなくなってきているようだ。もちろんブラックバスの捕食だけが原因ではないのだろうが、流れるままに経済効果だけを追ってきたツケがいずれ回ってくるのではないか。

 外来生物法が施行されても、ブラックバス、ブルーギルがこれだけ全国に広がってしまっていては同法の三原則はすでに末期的症状と言える。同法はリリースを禁止するものではない。しかし、県単位、湖沼河川単位で、リリース禁止や積極的駆除を打ち出すところが増えてきている。バス釣りで潤いたくない、在来種を守りたい、湖の生態系を元に戻したいという関係者のほうが多いに違いない。同法では防除の規定もあるので、いち早い手立てを取るのが得策ではないか。

 その場限りの一部の経済効果だけで、湖を見るのではなく、長期的将来を考えての方策を考える余裕が今、野尻湖には必要ではないだろうか。釣りはやはり、日本人の気質にあった「キャッチアンドイート」に限る。(文責 編集部)

 

ページトップ前へ次へ目次


nojiriko.com / contact us