童話館だより（２）
｢黒姫ものがたり」の歴史と舞台を訪ねて

 確かに今も、赤いのです。鉄分の多さがなせることでしょうが、その土地の特質が伝承と結びつき物語を彩っています。

愛の民話へ

 さて、この黒姫が竜から人々を守る物語が、竜と姫との愛の民話へと変わったのは、いつからでしょうか。

 はっきりそれが表れているのは、『信濃の民話』に収められている『黒姫物語』(1957年)だと思われます。童話作家松谷みよ子の初期の作品です。

 花見に訪れた高梨家一行のもとに現れた白蛇は、美しい黒姫と仲良くなります。やがて小姓に化した竜は、姫のもとへと通い、姫を嫁にと政盛に申し出るのですが、小姓の正体をつきとめた政盛が許すはずはありません。竜と黒姫をあきらめさせるために、名馬でかける政盛のあとを最後までついて来たならと、もちかけます。しかし、そこには政盛の策略があり、走り疲れた小姓を竜にもどし、土の中より突き出た無数の刃で痛めつけるのでした。  ⟩⟩⟩

御鹿池と黒姫山